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望むものと眺めるもの

  • 執筆者の写真: Hiroshe Haseba
    Hiroshe Haseba
  • 2018年11月10日
  • 読了時間: 1分

最初の数日は気がつかなかった

ただの黒い汚れかと思っていた

そのうちに床が湿ってきた

自転車のタイヤがひび割れてきた

隣りの家の子供が咳を繰り返し

妻は辛い料理ばかり作るようになる

夏の帽子が見つからない

涼しいどころか寒い

右手の人差し指が痛むから

指を指すどの場所もひどく痛む

それにしても注文した荷物が

いつまでも届かない

連行されて尋問されても

もう何を注文したのか思い出せない

三日後に解放されて部屋に戻って

しばらくして窓から猫が帰ってきて

餌をねだるのだが

棚も冷蔵庫も空っぽで

あげるものが何も無い

玄関には靴も無くなっている

ドアにはひどく乱暴なノックが続く

最初の数日は気がつかなかった

今になって思い返してもすべてが遅かった

葉はもうすべて落ちてしまった

 
 
 

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