top of page
検索

大いなる遅れ

つまりは遅れたということだ

傘など取りに帰ったのがいけなかった

冷たく濡れようがかまわずに

走りながら靴を履けばよかった

橋の上のバス停には誰もいなかった

最後のバスは出てしまった

つまりは大いに遅れたということだ

バスはもちろん明日もやってくるだろうが

そのバスに無事に明日乗ったとしても

同じ場所には行けないだろう

もちろん空腹だし

傘をさしていても靴は水浸しだ

もうすぐに雨期がくる

そう思っていたらやってきた雨で

これがはたしてもう雨期なのかどうなのか

判断がつかないうちに雨はますますひどくなった

つまりはたぶん生まれた日に

降っていたと聞かされた雨が

実はそれからずっと降り続いていたということ

この町が晴れていても

川向こうの町や

海向こうの村では

やはり雨降りだったのだから

こちらが少し動いただけだった

こちらが少し立ち止まっただけだった

つまりは雨降りだけが

雨降りだけがこの場所にはふさわしく

他の天気はすべて

裏ページに刷られている注意書きで

誰もそんなもの読みもしないということだ

つまりは遅れたということだ

また雨に追いつかれたということだ

最新記事

すべて表示

無効になった彼方へ

市街戦か紫外線か、選べ、と言われる それぞれで僕が受けるであろう影響を駅のホームで考える 死因としては(ああ静かな場面だ) 市街戦なら流れ弾、紫外線なら皮膚癌 格好としては(あの鳥が鳴きながら滑り降りてゆく) 市街戦ならカーキのジャケット、紫外線なら海水パンツ 運命としては(豪華な料理に賞賛の声が上がり、レストランの床が抜ける) 市街戦なら捕虜、紫外線なら疲労 つまり僕は流れ弾の皮膚癌を避けるがた

日々の肉に

血の味がする、あいつが言うわけさ やつは自分が住んでいる十階の部屋から 夜中に階段の手すりを叩きながら 上ったり下りたりするのが趣味なんだよ そりゃあやつの手のひらは鉄錆くさいだろうよ 血の味がするというけれど あいつが持ってきた肉まん、冷えて堅くなって縮んだそれは むしろ皮の甘い味が目立っている安物だ 血の味はお前の汚い手のせいだ、と大声でなじると 一緒にぐちゃっとした肉まんの食いかけが口から飛

WRITINGS & NEWS 

bottom of page