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大いなる遅れ

  • 執筆者の写真: Hiroshe Haseba
    Hiroshe Haseba
  • 2018年11月7日
  • 読了時間: 1分

つまりは遅れたということだ

傘など取りに帰ったのがいけなかった

冷たく濡れようがかまわずに

走りながら靴を履けばよかった

橋の上のバス停には誰もいなかった

最後のバスは出てしまった

つまりは大いに遅れたということだ

バスはもちろん明日もやってくるだろうが

そのバスに無事に明日乗ったとしても

同じ場所には行けないだろう

もちろん空腹だし

傘をさしていても靴は水浸しだ

もうすぐに雨期がくる

そう思っていたらやってきた雨で

これがはたしてもう雨期なのかどうなのか

判断がつかないうちに雨はますますひどくなった

つまりはたぶん生まれた日に

降っていたと聞かされた雨が

実はそれからずっと降り続いていたということ

この町が晴れていても

川向こうの町や

海向こうの村では

やはり雨降りだったのだから

こちらが少し動いただけだった

こちらが少し立ち止まっただけだった

つまりは雨降りだけが

雨降りだけがこの場所にはふさわしく

他の天気はすべて

裏ページに刷られている注意書きで

誰もそんなもの読みもしないということだ

つまりは遅れたということだ

また雨に追いつかれたということだ

 
 
 

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