top of page
検索

バスに乗るために

バスに乗るために小銭を集めるために瓶を割る

瓶を割るために石を拾うために河へ向かう

ずいぶんと遠い河に向かうために

そこまで歩いてゆくために

靴を新調する

靴を新調するために小銭を集めるために地面を眺める

地面を眺めるために眼鏡をかけるために耳を探す

いつのまにか消えてしまった耳を探すために

どこで落としたか思い出すために

雨に打たれる

今までどこにいっていたの、と聞かれる

手紙ぐらい書けなかったの、と問い詰められる

どこにいっていたのかわからないから

手紙など書きようがなかった

目をふさがれ

両手を縛られていた、と答える

まだ間に合う

最後のバス

小銭も持たずに家を追い出されて

途方にくれて歩き出す

バスに乗るために 乗らなかったために

乗れなかったために 歩き出す

また遠く離れてしまうのだ

毎日のことではあるのだが

それでもとても疲れることだ

最新記事

すべて表示

無効になった彼方へ

市街戦か紫外線か、選べ、と言われる それぞれで僕が受けるであろう影響を駅のホームで考える 死因としては(ああ静かな場面だ) 市街戦なら流れ弾、紫外線なら皮膚癌 格好としては(あの鳥が鳴きながら滑り降りてゆく) 市街戦ならカーキのジャケット、紫外線なら海水パンツ 運命としては(豪華な料理に賞賛の声が上がり、レストランの床が抜ける) 市街戦なら捕虜、紫外線なら疲労 つまり僕は流れ弾の皮膚癌を避けるがた

日々の肉に

血の味がする、あいつが言うわけさ やつは自分が住んでいる十階の部屋から 夜中に階段の手すりを叩きながら 上ったり下りたりするのが趣味なんだよ そりゃあやつの手のひらは鉄錆くさいだろうよ 血の味がするというけれど あいつが持ってきた肉まん、冷えて堅くなって縮んだそれは むしろ皮の甘い味が目立っている安物だ 血の味はお前の汚い手のせいだ、と大声でなじると 一緒にぐちゃっとした肉まんの食いかけが口から飛

WRITINGS & NEWS 

bottom of page