バスに乗るために小銭を集めるために瓶を割る
瓶を割るために石を拾うために河へ向かう
ずいぶんと遠い河に向かうために
そこまで歩いてゆくために
靴を新調する
靴を新調するために小銭を集めるために地面を眺める
地面を眺めるために眼鏡をかけるために耳を探す
いつのまにか消えてしまった耳を探すために
どこで落としたか思い出すために
雨に打たれる
今までどこにいっていたの、と聞かれる
手紙ぐらい書けなかったの、と問い詰められる
どこにいっていたのかわからないから
手紙など書きようがなかった
目をふさがれ
両手を縛られていた、と答える
まだ間に合う
最後のバス
小銭も持たずに家を追い出されて
途方にくれて歩き出す
バスに乗るために 乗らなかったために
乗れなかったために 歩き出す
また遠く離れてしまうのだ
毎日のことではあるのだが
それでもとても疲れることだ
Comments