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オレンジの皮

  • 執筆者の写真: Hiroshe Haseba
    Hiroshe Haseba
  • 2018年11月6日
  • 読了時間: 1分

どこに捨てられるの

バケツ一杯のオレンジの皮

もう黒ずんで虫を呼び始めた

裏口のゴミバケツの

アルミの蓋の上に

バケツ一杯のオレンジの皮

中身はすべて朝食のジュースとなった

子供たちが争って飲み干した

「皮も欲しいな」なんていう子は

誰ひとりいなかった

森の奥の陽のあたる場所から黒い動物が現れた

毛むくじゃらで熊にも似ているが

冬眠から目覚めたばかりの熊よりも

弱々しく頼りない風体の黒い動物が現れた

なにしろ体がほそながい

黒い動物は木と木の間を

流れる水のようにくねりながら

ホテルの裏口までやってきた

そして溶け始めたオレンジの皮の

甘い匂いにひかれるまま

裏口のゴミバケツまでたどりついた

黒い動物は礼儀正しく

何度か頭を下げてから

ゴミバケツに顔を埋めた

客たちはバルコニーから体を乗り出して

黒い動物の写真を撮る


オレンジの皮の色をした花が

群れて咲いている

森の奥の陽のあたる場所で

靴を脱ぎ花を押しつぶしながら横たわり

そのまま眠りについた


 
 
 

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