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まるで12月のように

村で一番年老いた もう何度も年老いて

まるで赤ん坊のようにつるつるになった

老婆が玄孫の乳を吸いながら

げっぷと一緒に予言した

月は終わる 私たちを何度も騙してからかっては

からからと笑っていた

あの憎らしい月がとうとう終わる

お前たち 準備はいいね

月が終わるんだよ 嬉しいじゃないか

月が終わったら河も止まるよ

河が止まったら空は染まるよ

空が染まったら土が煮えるよ

土が煮えたら皿は割れるよ

皿が割れたら夜が溶けるよ

夜が溶けたら朝がおどろいて

バケツを探してあちこち見回して

そして朝の野郎はやっと気がつくのさ

ああそうだ月が終わったんだ

これからはずっと俺しかいないんだって

そう、そうね、そうだよね

玄孫は老婆をあやしながら

その豊かな乳房をぎゅっと老婆の顔に押し付けて

老婆のつるつるの小さな鼻と口を塞ぐ

河が流れ 

空は澄み 

土は冷たく

皿は洗われ 

夜が広がり 

朝が来るまでに

月は終わるということ

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