top of page
検索

四季

 四人の男が、コンクリートの河の浅瀬を横並びで歩きながら、河を流す仕事をしている。今日一日だけの単発の日雇い仕事だ。まだ仕事を始めたばかりの男たちは、まだ午前中の早い時間なのに、もうすでに暗い顔をしている。曇り空のせいかもしれない。これから歩かなくてはならない長い距離を考えているせいかもしれない。ああ神様、と英語でE。え、何だって、少し耳の遠いWは必ず聞きかえす。Sは後ろを振り向き、そのたびにため息をつく。そしてNはみんなより少し先を早足で歩いてゆく。早く歩けば、それだけ早くたどりつけるはずだ。Nはそう信じている。だから、男たちが作る横並びの列、その不恰好なVの字の尖った先頭を保ちながら歩くのはいつもNの役目だ。長い距離を歩く男たちは口数少なく、それでも静かに、誰にも聞こえないように、話し続ける。

 河は右へと、大きな円を描きながら流れている。山から海へと、高い場所から低い場所へと流れていくのではなく、まるでドーナッツのように街を取り囲んで流れ続ける。なぜその河が流れ続けるのか、誰も気にしたりはしない。そういうものなのだ、とぼんやりと河の流れを眺めながら、街の人々は穏やかな日々を過ごしている。

四人の男が、コンクリートの河の浅瀬を横並びで歩きながら、河を流す仕事をしている。河は右へと、大きな円を描きながら流れている。

最新記事

すべて表示

無効になった彼方へ

市街戦か紫外線か、選べ、と言われる それぞれで僕が受けるであろう影響を駅のホームで考える 死因としては(ああ静かな場面だ) 市街戦なら流れ弾、紫外線なら皮膚癌 格好としては(あの鳥が鳴きながら滑り降りてゆく) 市街戦ならカーキのジャケット、紫外線なら海水パンツ 運命としては(豪華な料理に賞賛の声が上がり、レストランの床が抜ける) 市街戦なら捕虜、紫外線なら疲労 つまり僕は流れ弾の皮膚癌を避けるがた

日々の肉に

血の味がする、あいつが言うわけさ やつは自分が住んでいる十階の部屋から 夜中に階段の手すりを叩きながら 上ったり下りたりするのが趣味なんだよ そりゃあやつの手のひらは鉄錆くさいだろうよ 血の味がするというけれど あいつが持ってきた肉まん、冷えて堅くなって縮んだそれは むしろ皮の甘い味が目立っている安物だ 血の味はお前の汚い手のせいだ、と大声でなじると 一緒にぐちゃっとした肉まんの食いかけが口から飛

WRITINGS & NEWS 

bottom of page