目をしっかりと閉じているふりをして
夜明けのホールを裸足で掃除するのが仕事
今朝はいつもよりもひどい有様だった
飲み物は瓶ビールしかないことに腹を立てた
寒い国からやってきた漁師たちが
テーブルの上と胃の中を
すべてひっくり返して帰ったあとだった
目を閉じるふりをするよりも
鼻と口を覆っているつもりになりたかった
しかたがない、私は
モップとバケツを両手に下げて
ゆっくりとホールに入り
ご挨拶がわりにまずは
派手に転んでみせた
拍手と歓声、天井からは
紙吹雪と風船が舞い落ちたが
私はただ目を開き
目を閉じているふりをして
愚かで派手な手探りで
すぐそばに転がっているモップとバケツを
求める
誰かが床を傾けている
低く傾いたほうに
ただただ体を転がしてゆく
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